退院47週目(day404-day410)2014年07月26日 10時39分46秒

退院47週目、復職して1週間たった。

心配した立ち仕事だが思ったより体はつらくないようだ。規則正しく生活しているが、勤務時間の都合上、どうしても昼食が摂れない。朝食を8時に食べてから午後出かけるまでにお腹が減らないので、ほんのひとくち果物かお菓子をつまんでいく。

以前のような1日2食に戻ってしまった。でも体重はいまのところ増減なし。何とか朝夕の食事でカロリーアップを図ろう。

顔の皮膚症状が悪化したのでステロイドを塗っていたが、どうもひどくなる一方なので、真菌を疑い素人判断だが抗真菌薬に変えてみた。どうやら落ち着きそうな気配。

ただ見た目が甚だよろしくない。接客業なので上司の許可を得てマスクをかけさせてもらうことにした。真菌なら本当は開放した方がよさそうだが仕方がない。

外来のない週なので免疫抑制剤の量は変わらないが、環境が変わると慢性GVHDもひどくなるのかな。うちの場合、主に皮膚(顔と首)と腸管みたいで、今のところドライアイやドライマウスはない。

ちょっとした工夫が必要だが、この調子でやっていけない事はなさそうだ。安心する。

私もそれに合わせて出かける機会が増え、何となく慌ただしい。息子に何かあっても職場の誰かが気づいてくれるという安心感がそうさせるのか。家にひとりでいるより誰かの目がある方が心強い。

この1年、何かと後回しにしてきた大がかりな用事をぼちぼち片づけ始めるとするか。

と思ったが連日の猛暑にやる気がそがれる~(^_^;)

皆さんも熱中症にご用心くださいね。

第12回日本臨床腫瘍学会学術集会に行ってきました!2014年07月26日 11時29分28秒

PAP参加証
2014年7月17~19日、福岡市で開催された第12回日本臨床腫瘍学会学術集会に参加させて頂きました。

えっ、学会になんで医療者でもない人が参加できるの?って思うでしょ。私もそう思いました。でもお金さえきちんと払えば一般人も参加は出来るらしいんです。マニアもいるらしくて(^_^;)

でも今回はそうではなくて、ペイシェント・アドボケイド・プログラム(PAP)に参加したのです。これは予め応募用紙を送ってPAPに登録し、いくつかのルールを順守したら、学術集会のすべてのプログラムを聴講できるというものです。

PAPは患者支援の一環として、学会員の年会費から経費が計上され、その目的は患者に学術的な情報を積極的に収集して、患者会活動に活かしてもらうこと、なのだそうです。

対象はがん患者・家族、がん患者団体・支援団体、がん医療対策に携わるがん患者・支援者、となっていました。PAPの参加費は1000円でした。患者に少ない負担で有意義な情報を提供するという訳ですね。しかもランチョンセミナーにはお弁当も付いており、こちらもお得感ありました(*^^)v

私は初めての経験で舞い上がってしまい、聴きたいものをどんどんアプリで取り込みスケジュール表を埋め尽くしましたが、さすがにどれも難しい話ばかりで(当たり前か)、自分の頭のキャパを超えてしまい、一日の終わりにはくたびれ果てて帰宅するといった3日間でした。

でもね、参加できてよかった~!人間いくつになっても新しいことを学ぶのはいいこと。たとえ難しくて右から左に流れて行ってしまうような内容でも、1パーセントくらいは頭の片隅に残ると思うの。

もちろんPAP向けに用意されたプログラムもあって、これはフツーに日本語がわかれば理解できます。ここでは患者会の在り方について考えさせられる講演もありました。

この学会は血液がんだけでなく、すべての抗がん剤治療が必要な疾患が対象でしたので、自分の今まで知らなかった乳がんや大腸がんなどの固形がんの情報も得られて興味深かったです。

基礎研究の発表は英語も多く難しかったですが、臨床の方は何とかわかる部分も多く、内容はここでは言えませんが期待が膨らむものもありました。

また支持療法やリハビリ、介護の分野、またがん治療における妊孕性温存の話も大変役に立ちました。

最後の日19日に市民公開講座「抗がん剤治療は怖くない!」が併催されており、他のがんと共に血液がんからは浜の町病院の衛藤先生、工藤看護師、リボンの会から代表の宮地さん、柴田さん(日本骨髄腫の会)が登壇されました。

まず患者のMさんが体験発表をされ、それぞれの立場で意見を述べるという形式でしたが、ずいぶん前から周到な準備をされていたので本番でもうまくいってホッとしました。

患者さん(悪性リンパ腫)の話も闘病中は大変苦労されたとは思うのですが、思考が合理的かつ前向きでとても勇気づけられました。現在は社会復帰されてバリバリお仕事されているようでした。

何だか総花的でまとまりのないものになりましたが、このような患者支援プログラムのあることを知って頂き、患者会運営に携わる方なら機会があれば是非参加して頂けたらと思い、報告させて頂きました。

九大の医療講演会に行ってきました!2014年07月26日 13時02分21秒

臨床腫瘍学会から間もない7月21日(月祝)13時30分~16時30分、九州大学病院の百年講堂で第6回血液疾患医療講演会が開催されました。

九大以外の患者・家族も参加できますが、今回は事前にプログラムの詳細がわからなかったため、私たちも具体的な告知ができませんでした。

参加人数は前回よりずいぶん少なかったように思いましたが、内容は斬新で濃く、療養中の移植患者にとって実際に役立つものでした。以下は講演の記録というより、私の感想と言った程度でお読みください。

まず最初に原三信病院産婦人科の片岡恵子先生が「抗がん剤治療と卵巣機能」についてお話されました。

いわゆる妊孕(にんよう)性について、主に女性患者の場合について話されたのですが、男女とも「命が助かればいいじゃないか」といった発想の治療から、「治療後その人がどう生きるのか?」を踏まえた治療へと、ゆっくりですが変化しつつあるということでした。

化学療法だけでも精巣や卵巣毒性がありますが、やはり放射線治療のダメージは大きく、従って造血幹細胞移植の前処置は二重のダメージを受け、ほとんどの患者が不妊になるわけです。

もちろん急性白血病のように本人の命を優先せざるを得ない患者の場合は困難ですが、治療開始までに猶予のある患者の場合は何とか妊孕性を残すような取り組みが可能になって来ました。

以前は技術的にパートナーのいる患者の場合、受精卵の凍結保存が一般的でしたが、今では未授精卵の凍結保存や卵巣の凍結保存の技術も進んできました。

もちろんそれと同時に卵巣機能を一時的に休ませて保護するGnRHa療法(リュープリンなど)も行います。移植治療後に再びホルモン療法で回復させるのですが、100%という訳にはいきません。それでも諦めずに長期間ホルモン治療を続ける意義はあるそうです。

治療後深い寛解が得られパートナーと出会って、いざ凍結した卵子や精子を使って不妊治療を受ける時にも高いハードルが待っています。現在の技術では未授精の卵子や精子は解凍時にダメージを受けやすく、確率が下がるのでいわゆる体外受精(顕微授精)をしなければなりません。

高額な不妊治療費に加え、精神的な負担も大きいと聞きます。それでも、最初から子どもを持つ選択肢がなく厳しい治療に臨むのと、少しでも可能性を残しつつ治療を受けるのとでは、患者のモチベーションに差が出てくるのではないでしょうか。

もちろん世間には子どもを持たない選択をするカップルもいますし、血液疾患の治療以外の理由で不妊になる方もおられます。何が何でも自分の子をというのはワガママなのかもしれませんが、息子のささやかな夢「普通の家庭を持って子どもと遊ぶ」を叶えさせてやりたいと願っています。

うちには間に合いませんでしたがそのうち精巣凍結保存という治療法も出てくることでしょう。そんな情報も患者が聞かなければ提供されないのではなく、血液内科医が産婦人科や泌尿器科と連携を取って、患者に提供してもらえればありがたいし、生きる意欲につながっていくと思います。

2番目に九大全身管理歯科の二木寿子先生が「血液の病気と歯科の関わり」と題して血液疾患患者の口腔ケアについて話されました。

移植の前処置の前に、歯を抜かれた経験のある方も多いでしょう。深いう歯の場合は抜歯しかありませんが、治療開始までに時間のある軽度のう歯なら治療して移植に臨むことができるそうです。

口腔は常在菌の多い環境なので九大では移植前にセルフケアの指導もし、移植中もラウンドして粘膜障害のひどい患者にはレーザー治療を行っているそうです。

3番目に2年前九大から北大に行かれた豊嶋崇徳先生が「血液病治療の過去から未来へ」という講演をされました。

今からたった60年前、白血病に有効な治療はないといったウイントローブ博士が驚くばかりの血液病治療の進化についての話でした。抗がん剤だけではない抗体治療や分子標的薬の話を多方面からしていた頂いたのですが、印象に残った小話の一つ。

1889年、あのシャーロック・ホームズの作者であるコナン・ドイルが白血病には亜ヒ酸が効くって発見したんですって~!知らなかった。これが今やAPL(急性前骨髄性白血病)の治療にもつながってますよね。

最後に原三信病院の「移植患者の生ワクチン接種の積極的取り組み」について、がん化学療法看護認定看護師の横田宜子さんから発表がありました。

移植患者にとって社会復帰には色々な障壁がありますが、そのひとつが免疫抑制剤やステロイド服用による易感染。つまり病気にかかり易いって問題です。

自分の免疫システムを一度破壊してから、他人様の造血幹細胞を頂いている訳ですから、自分がかつて罹患したり予防接種で獲得したりした抗体が、赤ちゃん同様になくなってしまっているのです。

そこで予防接種をどのように受けて新たに獲得していくかを病院側がガイドラインを作り、罹患の可能性の高い患者を対象に生ワクチンの積極的に受けてもらうようにしました。

条件は
①移植後2年経過している。
②GVHDがない。
③免疫抑制剤が切れている(ステロイドは少量ならよい)。

対象は
①自分に小さな子どもやお孫さんがいる方
②保育士や先生など職業柄小さな子どもと接する方
③医療現場のスタッフ
④接客業など不特定多数の人と接する業種の方

まずは患者に抗体検査(保険適用)を受けてもらう。
抗体のなかったものについて発注し接種(自費診療)。
接種後1時間安静にして副反応を見る。
本人にもワクチン日誌をつけて体調を管理してもらう。

生ワクチンは4種類。はしか、水疱瘡、風疹、おたふくかぜでいずれも成人してからでは重症化し危険である。リスク回避の為だが重篤な副作用もある。

不活化ワクチンについては問題ないのでインフルエンザは1シーズンに2回接種、肺炎球菌について毎年接種が望ましいそうです。

リボンの会の勉強会でも取り上げられたテーマですが、接種は基本的に患者個人に任されており、接種に二の足を踏むことも多いのが現状です。原三信病院の取り組みは素晴らしいと思いました。

講演後ラウンドテーブルディスカッションが予定されていたのですが、質疑応答が白熱して時間が押してお開きとなってしまいました。

今後も年2回程度の開催を考えていらっしゃるようでしたが、もう少し詳細な告知を早めにしてもらえたら、もっとたくさんの患者さんに聞いてもらえるのにと残念に思いました。

血液疾患治療の周辺の部分に関する、このような講演が今後もっと増えてくるといいなと思います。治る患者が増えてきたからこそ、その後の人生をQOLを高く保って生きていくために知っておきたい内容だと思うのです。