特発性大腿骨頭壊死症の治療方針2015年10月03日 11時38分58秒

この1週間は精神的に不安定で実に重苦しい日々だった。

私たちがネットや患者会で情報を探し回っているうちに、主治医の血液内科と整形外科の先生が相談されたらしい。その結果を踏まえて、昨日は病状の詳細と治療方針について整形のI先生から説明があった。

土曜日に特発性大腿骨頭壊死症友の会に行って講演を聞き、素人ながらも少し勉強してきたことを伝えると、そこまでわかっているならと前回よりかなり詳しく、時間をとって説明して下さった。

結論からいうと、息子のケースでは人工骨頭置換術がもっとも適しているので、出来るだけ早く手術を受ける方がよいとのことであった。人工骨頭は人工股関節とは違い、骨頭のみ人工に置き換える術で、今考えられる中では最も低侵襲だそうだ。

15~20年先に人工骨頭の寿命が来て、将来股関節全体を人工に置換する時もスムーズに移行しやすいという利点がある。

私たちは骨切り術に希望を持っていたが、息子の左側の病状はステージ3AのタイプC2で壊死の部分が大きいため、適用できないらしい。強行するにはリスクが高すぎて勧められないとのことである。

また内科的な見地からも、白血病という基礎疾患がある息子にとって何時間にも及ぶ骨切り術は出血や感染症のリスクが上がるので勧められない。

また、今服用しているくらいの量なら免疫抑制剤は止めなくても手術は出来るらしい。免疫抑制剤が切れるのを待っているうちに病状の悪化が懸念されるので、手術は早いに越したことはないらしい。

I先生の丁寧な説明を聞いて私たちはかなり納得した。そして骨頭置換の手術をするなら、この病院でI先生にお願いしたいという気持ちになった。

しかし、やはり息子の大事な人生にかかわる選択なので、1ヶ所だけセカンドオピニオンを受けてみたい思いはあった。I先生にその旨を申し出ると資料を用意してくださるとのことだった。

人工骨頭術なら入院は3週間くらいで1ヶ月くらいの休職で済み、立ち仕事もOKらしい。今の仕事を辞めずに済む可能性が出て来た。テニスも先生はOK出さないが、内緒でやっている人はいるらしい。

整形の診察室をでる時には私たちは先週よりは明るい気分になっていた。

その後、血液内科の定期受診に行くと先生も1ヶ所くらいのセカンドオピニオンはいいんじゃないの?みたいに言われたのでほっとした。

血液データは白血球、血小板は基準値内、ヘモグロビンはやや低かったが、まずまず落ち着いている。しかし皮膚の状態があまり良くないので、今回はネオーラルを減量しなかった。60㎎で現状維持である。

セカンドオピニオン先でI先生と同じ意見が出たら、息子はずいぶん前向きな気持ちで人工骨頭術を受けることが出来るはず。しかし、違う見解が出たら迷うだろうな~。

明日は山口で開催される「おれんじの会」の医療講演会を聞きに行く予定。息子は勤務なので主人と出かける。主人にもIONの一般的な知識を共有してもらいたいので、いい機会かなと思う。

おれんじの会市民公開講座へ行ってきました!2015年10月05日 15時59分19秒

10月4日、山口のNPO法人おれんじの会主催の市民公開講座が下関で開催されましたので参加して来ました。

おれんじの会は山口県特発性大腿骨頭壊死症友の会です。
http://blog.canpan.info/orange083/

テーマは「股関節の病気と歩行障害」で講師は山口大学整形外科の今釜崇先生でした。大変丁寧でわかりやすく、股関節のしくみから始まり、色々な病気と治療法、最後はロコモティブシンドロームまで幅広く話して頂きました。

特発性大腿骨頭壊死症(ION)の基本的な知識を夫に理解してもらうのには、うってつけの内容でした。息子と私は整形外科のI先生の診察時に色々な説明を受けていましたが、夫は同席していないので色んな事がまだよく理解出来ていなかったからです。

また医療講演会では、耳から聞く専門用語がわかりにくいという事がちょくちょくありますが、今回は「要約筆記下関」の人たちの協力で、内容がリアルタイムで前方のプロジェクターに表記されて大変理解しやすかったです。

これは耳の不自由な人だけでなく、誰にとっても親切で優しいサービスだと感心しました。いつかリボンの会でも出来るといいなと思いました。

講演後の質疑応答で、人工関節術を受けられた方の悩みがわかったことも収穫でした。今まで、私は手術までのことを主体に考えてきましたが、その後の生活のことも視野に入れなければと気づきました。

代表の渡辺さんは自身も難病を2つ抱える患者でありながら、現役の整形外科医であり、患者会活動も精力的にこなすパワフルな方です。私たち夫婦も講師の今釜先生や渡辺さんから、親身なアドバイスやパワーをたくさんもらって帰りました。

帰り道夕陽を見ながら渡る関門海峡はとても綺麗でした。下関まで行って本当に良かったです。

セカンドオピニオンの資料をもらう2015年10月12日 09時05分12秒

前回の外来で整形外科の先生にお願いしていた資料が出来上がったので病院に取りに行った。

いよいよ今週はS大にセカンドオピニオンを受けに行く。ちょっと緊張する。息子と2人で聞きたい事を整理してまとめる。

急激な痛みを覚えてから3週間が経過した。近頃息子は杖をついていない。足の痛みが全く消えてなくなったからだと言う。歩き方も普通になった。

こうなると「自分は元気になった、もう手術はしなくてもよい。」といった方向に患者の心理は傾く。でもネットで調べると「痛みが消える=治る」ではなく、痛みは繰り返し、長い時間をかけてやはり悪化への一途をたどるらしい。

誤解のないように記すが、悪化は壊死が進むということではなく、壊死した部分の圧潰が進む、または健康な臼蓋関節の方にまで損傷が及ぶという意味だ。

ステロイド性の大腿骨頭壊死(ION)の場合、理由はわからないが、ステロイド投与後の6週から9週くらいで壊死は起こってしまっているのだ。その代わり、壊死は広がったり再発したりはしない。

息子の場合はおそらくもう2年以上前の移植の直後に壊死は起こっていたのだ。壊死が起こっても骨は固さがあるので一見そのままの状態が続く。

圧潰して初めて痛みが出て発症する訳で、それは息子の場合はテニスがきっかけだったが、何もしなくても2年くらいたった頃に潰れるという人が多いらしい。

ステロイドを大量に使った人のすべてがIONになる訳ではなく、ごく少数だし、どうして大腿骨への血流がストップして壊死を起こすのかも解明されていない。だから特発性と付けられているのだそうだ。

今こうなっているのは晴天の霹靂ではなく、もう2年前から決まっていたことなんだと思うとやりきれない気持ちになる。しかし、白血病の治療の過程でステロイドは使わざるを得なかった。それは当然のことだと思う。

素人考えながら、壊死を起こしてからの2年の間に1度くらいMRIを撮り発病が確認されたら、なんとかそのボロボロの大腿骨頭を補強するような物質を注入するとかして圧潰を未然に防ぐことが出来ないものだろうか?などと考えてしまう。

こんな侵襲の大きな手術を受けなければQOLを維持できないようになる前の予防的な治療法の開発を、これからの患者さんたちの為に期待したい。ちなみに私が患者会で質問した、ips細胞を使った再生医療の可能性については、実現は50年くらい先と言われてしまった。しかし、考え方としては夢物語ではないそうである。

ようやく進むべき道が見えてきた2015年10月18日 14時42分40秒

股関節の痛みが出てから、あちこちの患者会や講演会、病院を回って1ヶ月。ようやく自分たちがどのようにしたいのかが、おぼろげながら見えてきた。

今日は久々にこの秋晴れのように気分がすっきりしている。IONの発症がわかってから、息子は落ち込んでいるし、私も日常の生活をこなすのが精一杯でちっとも楽しい気分になれなかった。

2人で新しい情報を得たら話し合い、また新たな情報を探しに行く繰り返しの中、だんだん気持ちに余裕が生まれてきた。まだ最終的に決めた訳ではないが、今の自分たちの気持ちは以下のとおり。

本命のセカンドオピニオン先の病院で大変丁寧に説明を受けた後、結論は骨切り術は不可能ではないがQOLを上げることにはつながらないという結論に達し、選択肢から外した。

ではI先生に勧められている人工骨頭を選択するのかというと、それも自分たちの希望(テニスがしたい)にはそぐわない事がわかり、人工関節が現時点ではベストではないかと思うようになった。

人工骨頭を選択しないのであれば、手術の時期はもう少し先に延ばせるので、先に血液内科を治療を優先させてもよいのではないかと考えるようになり、とにかく免疫抑制剤(ネオーラル)が切れるまで様子をみることにした。

順調に行けば、あと半年くらいでネオーラルは切れそうである。ひどいGVHDが起こらないように気を付けて生活し、それまでに圧潰が進み痛みが出ても鎮痛剤で何とか持たせて、半年後に手術に漕ぎつけたいと思っている。

手術の方法についても後方アプローチではなく筋肉を温存する前方アプローチを希望していたのだが、なかなか良い情報が得られず落ち込んでいた。しかし先週末、最初から除外していたある病院に行ってみて、そこで大変有益な情報を得た。

人工関節術の前方アプローチを取り入れている所だった。九州ではあまりこの方法を取り入れている病院がないので、関西か東京へ行くしかないのかと思っていたが、福岡でもわずかにあるらしい。

「意志あるところに道は通ず」ってちょっと意味は違うかもしれないが、息子の喜ぶこと!私も目の前がパアーッと開けたような気分になった。

これで次の外来で自分たちがどのようにしたいのかを先生に伝えることが出来る。それについて先生がどのように判断されるかはわからないが、少なくとも話し合いのスタートには立てる。

ほっとしたので、ION発症の前から計画していた、海外旅行に予定どおり明日から出かけることにした。いつもは違う場所で暮らしている他の息子たち。家族が全員集まるのは2年ぶりくらいか?

短いけれど記憶に残る旅にしたい。いやきっとそうなるだろう。いっときIONのこともALLのことも忘れて羽目をはずしてこよう!行ってきま~す(^o^)/

紆余曲折の果て2015年10月29日 23時18分39秒

セカンドオピニオン(正確にはマルチオピニオンだが)後、初めての外来受診日に、自分たちの希望を伝えた。

即ち、人工骨頭ではなく人工関節置換術を前方アプローチで行って欲しいという希望だ。

先生は「人工関節でも構わないが、自分としてはより侵襲の少ない人工骨頭がベストだと考えている。手術の方法としてこの病院では前方アプローチは行っていないので希望に添えない。」と言われた。

それではどこでなら前方アプローチをしてくれるのか?と先生に尋ねる訳にも行かないので、自分たちがこれまで得た情報の中から、現実に血液疾患患者の手術に対応してくれそうな病院を体当たりで受診することにした。

そこは、自分たちの希望を叶えてくれ、しかも自宅からそう遠くない病院(東京や大阪ではない)なので、受け入れてくれることがわかれば決めるつもりでいた。

紹介状なしのいきなりの受診だったが、最初若い先生が優しく丁寧に話を聞いて診察し、その後整形外科のトップの先生に引き継いで下さった。大袈裟でなくここが最後の砦とばかりに藁をもすがる思いで行ったので、親身な対応が実に有難かった(涙)

そしてその病院の血液内科を受診した上でOKが出れば、希望通りの手術をしてくれることになった。しかし、大変予約が混んでいるので最短でも来年の2月頃にはなるとの事。

しかも2つの病院間でいろいろ済まさなければならない手続きが山のようにある。まずは現在の整形外科の先生にごめんなさいの断りをいれる事が最優先だ。

次に血液内科の先生から紹介状を書いてもらって、手術する病院の血液内科に引き継いでもらう。特定疾患の申請もしなきゃだし、会社への休職願いや高額療養費限度額認定証など、移植の時のことを思い出してしまった。

それでも息子と私は嬉しくて嬉しくて、目の前がパーっと明るくなった。入院の仮予約を済ませての帰り道は、ION発症がわかってから一番心も足取りも軽く思われた\(^o^)/